紅い月影の少女

戦争の数日前のある日の帰り道

？？？：
　アヤ……

ルミニ：
　うわっ！……びっくりしたぁ……

そこには、血のように赤い髪、透き通るような白い肌を持つ、漆黒のドレスに身を包んだ小柄な少女が居た。

翔子：
　あらかわいい！
……は、いいとして、この子だれ？　アヤの事知ってるみたいだけど？？？

アヤ：
　……！
もしかして、ディオネちゃん……？

翔子：
　ええ！？
ディオネって、中学の頃にアヤん家の近所に住んでた、あのディオネ？

少女は黙ってコクリとうなずいた。
その瞳には、心なしか涙が浮かんでいた……。

ディオネ：
　……。（ぎゅっ

ディオネはアヤの下に歩み寄ると、アヤの胴に腕を回し、しがみついた。

ルミニ：
　うにゃっ！？

翔子：
　えええええ！？(///

アヤ：
　え、ディオネ、ちゃん……？

ディオネ：
　ずっと会いたかった……。
ここに来るのがとても楽しみだったの。愛しているわ、アヤ……。

翔子：
　な、何言ってんのさこの娘……！？
女の子同士なのにさ！

ルミニ：
　そーゆー穿った意味じゃないと思うよ。
てーかそれ、あんたが言うな！

アヤ：
　そうだったのですか、ディオネちゃん……。
とても、寂しかったのですね……。
でも、どうやってここに……？

　ディオネは自己紹介を終えると、自分の過去を全員に語った。

　この娘、ディオネ・キーラーは、貴種ヴァンパイアのシャルナ・リングレットを母に持つ従属種ヴァンパイアである。
自分の力を悪用しようとする母、シャルナから護ってくれていて、かつディオネの唯一の理解者であった父を殺害され、
悲惨な生活を送っていたが、アヤと出逢い、アヤの愛情に触れることで、人を愛する感情を取り戻した。
　アヤが引っ越した後、意見の違いから母シャルナによって棺に封印されるが、数ヶ月前に封印から醒め、シャルナを討ち破り、自由を得たのであった。

ディオネ：
　そして、シャルナを倒した後……、自分の能力の事、銀誓館学園という組織の事、アヤ達がそこに居る事、全て調べたの。
それより、ごめんなさい、私……、自分が能力者だって事、ずっとアヤに黙ってて……。

アヤ：
　いいのですよ、ディオネちゃん。謝ることはありませんよ……。
ディオネちゃんがそうしたのは、私を巻き込むまいとする、貴方の覚悟の表れだったのですから。
むしろ、私がお礼を言わなくてはいけないくらいです。ありがとう、ディオネちゃん……。
（ディオネの頭をなでなで）

ディオネ：
　え、あの……、別にお礼を言われるほどの事じゃない、と思うの……。
「覚悟」というのも、これからだし……。

翔子：
　……うん？　どういうこと？

ディオネ：
　戦争が近いって聞いているの。ここに来た理由の一つがそれ。
私は全力でアヤ達を守る。ルミニや翔子以上にアヤを守れるのはこの私だから……。

ルミニ：
　うわ、すごい自信……。どっから湧いてくるのよ、それ？

ディオネ：
　アヤは、死んだお父さん以外で初めて、この私の存在価値を……、私の能力じゃなくて、私自身の存在を認めてくれた人だから……。
こんな私でも、誰かを愛し、愛されてもいいんだって、教えてくれたから……。
人が神を愛するのと同じように、あなた達のことを愛している。
皆の為なら、全てを差し出せる。それで、ここに来たの……。

ルミニ：
　ウーム、なるほど……。
どうやら、自信というより、覚悟といった方が適当なようね。

アヤ：
　私達の為に来てくれたのですね……。
ふふっ、改めてありがとう、ディオネちゃん。

ディオネ：
　だからお礼は……。
えと、その……、ど、どういたしまして……。

翔子：
　きゃあああーッ！　やっぱりかわいいーッ！
よぉし、今日はディオネの歓迎パーティよ！

ルミニ：
　あっ、なんで翔子が決めちゃうのよ！？
調子いいなあ、もう……。

アヤ：
　そうですね。では今日は翔子さんにたこ焼きを作って頂きましょうか。

翔子：
　なぬ！？
……い、いや、よ、よーし任せなさいッ！

アヤ：
　ふふっ、ディオネちゃんも、それでいいですよね？

ディオネ：
　うん……。
私、皆が作ったものだったら、何でも食べる……。