おにぎりです

　草木も眠る丑三つ時……。
家族も皆寝静まったはずの長南家の台所には明かりが一つ、灯っていた。


『ぅうん……、アヤ、さん……？何やってるんですか、こんな時間に……？』

アヤ「……！はっ、……なんだ、背後さんでしたか……。」

『怖い！アヤさん怖い！目の下クマできすぎです！
本当に、一体こんな時間まで何やってるんですか！？』

アヤ「あ、すみません……。ええ、今度天体観測に持って行くための
　　　おにぎりを作る練習をしていたのです。」

『それで、こんなに大量のおにぎりを……？』

アヤ「はい、色んな種類のおにぎりがあったほうが、皆様に喜んで頂けると
　　　思って、色々試してみたのですが。」

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　　　　　　　　　　　　アヤのおにぎりメニュー
○三角おにぎり
・梅　「真ん中に梅干の入ったおにぎり。」
・鮭　「焼き鮭のほぐし身入り。」
・昆布　「昆布の佃煮入り。」
・おかか　「鰹節が入っている。」
・明太子　「明太子入り。」
・焼きおにぎり　「醤油を塗って焼いたおにぎり。具は無い。」

○俵型おにぎり
・チキンライス　「チキンライスで作ったおにぎり。具は無い。」
・五目　「五目ご飯で作ったおにぎり。」

○球状おにぎり
・バクダン　「蒲鉾を揚げたものが入っている。通称バクダン。」
・たこ焼き　「まさかのたこ焼き入り。大阪に居た時友人から教わったもの。」
・モーラット　「モーラット型の可愛いおにぎり。具は装飾の海苔のみ。」

○？？？
・緑茶　「刻んだ茶葉が入っている。香りは良い。」
・真・クリムゾンスパム　「飯は刻んだ梅干とキムチが入って真っ赤。
　　　　　　　　　　　　　　　その上にスパム（スパイスド・ハム）が乗ったもの。
　　　　　　　　　　　　　　　アヤの親友直伝。親友曰く『おにぎりの究極形態』
　　　　　　　　　　　　　　　歴史上、これを制したのは親友とアヤのみ。」

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『えーと、何からツッコんだらいいのやら。』

アヤ「……？「真・クリムゾンスパム」ですか？」

『名前といい、色といい、これ既におにぎりと言っていいんですか……？』

アヤ「でも、結構美味しいですよ。私、食べられない物は作りませんから。」

『はぁ……。では、お一つ……。』

　　　　もぐもぐ……


アヤ「どうですか……？」

『アヤさん、また担がれてましたね……』

アヤ「……え？」


──かくして、伝説の真・クリムゾンスパムは歴史の闇へと消え去った。