アヤの経歴

背後「あ、どうも。私、長南アヤの背後として長南家に厄介になっている
　　　者でございます。
　　　　で、何故私めが登場したかと申しますと、本日はアヤさんに内緒
　　　で少しばかり彼女の過去の話をしていきたいと思いまして……

　　　……あ、前フリが長くなってしまいましたね。
　　　（近くにアヤが居ない事を確認して）では、どうぞ。」

 

　現在は鎌倉市に住んでいるが、生まれは佐賀。１９９４年４月２７日
午後１１時５７分に長南家の長女としてこの世に生を受ける。
若干の未熟児であった。

　その後も両親の愛情を一身に受け、普通と何一つ変わらない
優しい女の子に育ち、幸せな生活を送ってきたが、小学２年生の
ある日、ある事件に巻き込まれる。

　長南家の近所に、アヤとその友達が仲良くしている若い女性が
住んでいるのだが、近くの公園をアヤが通りがかった時、その女性
が友人を襲撃している所を目撃してしまう。
　女性は実はリリスだったのだ。
　友人を護る本能と、裏切られた怒りからアヤは我を忘れ、覚醒。
その能力の暴走により、リリスは殲滅されたが、友人に重傷を負わせてしまう。

　アヤ自身も無事ではなく、全治３ヶ月の怪我を負うも、致命傷には
至らなかった。が、それ以上に不可解な事が起こった。
雪国育ちのような白い肌が、一日にして夏場の運動部員のように
焼けていたのだ。後にこれは光の力の暴走が影響していると判明した
のだが、この時はただ奇妙な現象として記憶に残った。

　事件から数ヶ月後、長南家は大阪に引っ越す事となった。
この時アヤはすでに数ヶ月前の事件の事は忘れていた。
いや、たぶん初めから覚えていなかっただろう。
　この時のアヤは、事件の時、友人を傷つけたという事が深層心理に
焼きついている為か、内向的で暗い、心を閉ざした性格へと変わって行った。
その為、中学まで親友の一人も居なかった。

　だが、中学に進学する際、アヤは変わった。
入学式の日、ふとした事からアヤは街の不良たちに絡まれてしまう。
どうにでもなれ、とアヤが全てを捨てかけたその時、一人の少女が
颯爽と現れ、不良たちを薙ぎ倒しアヤを救った。礼を言う暇も無く去って
いった少女だったが、入学式で再びその姿を見たときはアヤも少女も驚いた。

　一応礼を述べると共に、何故助けたのかとアヤが問うと、別に理由は無い、
と少女は一蹴してのけた。面食らった様子のアヤに、困っている人を助ける
のに理由がいるのか、と少女が続けた。
　アヤは再び面食らった。事件以来、他人と関わろうとした事など無かった
アヤに対して、少女は初めて人として平等に接してくれた。
この時、アヤの心に光が射した。アヤの閉ざされた心は再び開かれ、
昔のように優しい性格へと戻ったのだ。
　アヤはこの少女と親友になり、他人の為に献身的な性格になった。

　だが、中学２年生の時、親の仕事の事情から鎌倉へ引っ越す事となる。
親友との別れを惜しみつつ、鎌倉へと引っ越したアヤは、将来人の役に
立てる仕事に就こうと受験勉強に勤しんでいた。そしてその時アヤが
志望した学校こそ、銀誓館学園だったのだ。

　合格が決定し、入学案内のパンフレットを読んでいた時、一つの
不可解な書類を発見する。その書類には、かつての能力暴走事件の事、
そしてそれが自分に秘められた能力である事が書かれていた。
この時初めて自分が能力者だと知ったアヤは、この事を両親に告げる事
無く詠唱調律車両へと乗り込む。

　そうして現在、力を持たない両親を護る為、あの時自分を助けてくれた
少女に報いる為、そして、かつて自分の能力のせいで大怪我を負わせて
しまった友人ような人を二度と出さない為、戦う事を決心したのであった。




ガチャリ……

アヤ「あ、背後さん。なにを書いているのですか？」

背後「……！（慌てて今書いていた物を隠す）
　　　あ、アヤさん！？いえ、別に……、何でもありませんから！」

アヤ「……そうですか。なら構いませんけど。」

背後（……ホッ）

（アヤ、部屋にあったティーセットを片付ける）

アヤ「では、私はこれで失礼しますね。」


……バタム


アヤ（あれ、何で私、急にあの人の事を思い出しているのでしょう……？）

アヤ（中学の時、私に優しさを教えてくれたあの人……、今は何を
　　　なさっているのでしょうか？）

アヤ（出来れば彼女にもう一度会ってお礼を言いたいですけど、
　　　私が今やるべき事は、人様のお役に立つ事、ですよね。
　　　これが私の出来る最高の恩返しですし、彼女もきっとそれを
　　　望んでいる筈です。）

アヤ「もっと頑張らないと、ですね！」