テスト前雑談 「春河翔子は動かない」

　あたしは春河翔子よ。
あたしは今、ちょっとした恐怖を感じているの。
あたしは学生という身分のハードな面を、この度改めて垣間見る事になったのよ。

ある日の夕方 

翔子：
アヤ～

アヤ：
……（勉強中）

翔子：
ア～ヤ～～～？

アヤ：
え、あ、はい！　なんでしょうか？

 翔子：
随分熱心だったけど、なにしてたの？

アヤ：
何って、勉強ですよ。テスト前でしょう？
それで、ご用件はなんですか？

翔子：
いや、特に用事はないんだけどさ、あまりに鬼気迫る表情だったから……

アヤ：
でしたら、集中したいので、暫くお話し掛けにならないで下さいね（にこ）

翔子：
（……こわッ！）



翔子：
ねえルミニ、なんでアヤはいつにもましてあんなに真剣に勉強してるの？

ルミニ：
これのせいでショ（ぴらっ、とアヤの後期中間テストの英語（リスニング）の答案を見せる）

翔子：
46点……、なるほど、そういうことね（……それでもあたしの平均点より高い）

ルミニ：
それより、なんであんたはそんなに余裕なのよ？

翔子：
あたしはほら、これ以上下がりようがないからね。ニョホ

ルミニ：
……だめだこいつ、早くなんとかしないと


1時間後


翔子：
アヤ～、おなかすいた～！　ご飯作って～

アヤ：
すみませんが、自分で作ってください。
私の分はあとで自分で作りますから

翔子：
……。
とりつく暇もないとは、まさしくこの事ね

ディオネ：
仕方ないから、私達で作りましょう。（※長南家では普段、アヤさんが食事を作っています）
あと、とりつく「島」よ

翔子：
……Σ
し、知ってるわよォォォォ！！
国語の先生かッ、う、うああ……、あんたは～～～(///


食後


翔子：
……

アヤ：
……（黙々と勉強中）

翔子：
……（どうしよ、沈黙が痛い……）
あ、あのさアヤ……？

アヤ：
はい？

翔子：
さっきからずっとその調子だけど大丈夫？
お腹空いてない？

アヤ：
ええ、オートミールを頂きましたから。
それより翔子さん、ご自分のお勉強は大丈夫なのですか？

翔子：
うぐぅ……（あ、そうだ！　勉強関連なら取り合ってくれるかも）
そうだアヤ、勉強教えてくれない？

アヤ：
すみませんが、今の私にそのような余裕はありません。
ご自分で勉強なさって下さい

翔子：
……



翔子：
うわああぁぁぁん！　ルミニィ～！！
アヤが全然かまってくれないよォォォォ！！

ルミニ：
ちょ、ちょっと落ち着いてよっ！
ほら、素数でも数えてさ

翔子：
「１」「２」、「３」「５」「７」、「１１」「１３」……、「１７」「１９」……、「２３」「２７」、違う「２９」……
うん、落ち着いた……

ルミニ：
そう、じゃあ言わせて貰うけど、構ってもらおうとする前に勉強しなさいよ

翔子：
だってわかんないんだもん！！

ルミニ：
普段から居眠りしてばっかりだからよ

ディオネ：
うん……。
それと、１は素数じゃないから……



あたしは春河翔子よ。

あたしはときどき自分の幸福について考えるの。
自分の「幸せ」は、だいたい「人間関係」に関わるものだったわ。

食事は何を食べるかより、誰と食べるか。スポーツは何をやるかより、誰とやるか、よ。

なら今は、一体何に幸せを見出せば良いのか？
ただ、あたし達が学生という身分である以上、「勉強」を生きがいにしていれば幸せになれるのかな。